植物工場の投資額については、条件によって異なるため、一言で説明することは難しいです。全国の様々な稼働施設から判断すると、高単価な野菜で黒字化を実現している最低資本額は「2,000万円~3,000万円」前後リーフレタスのような市場規模・需要が大きな商品を生産する場合は「1億円」前後の投資額を用意する必要があります。

【 補足・概要情報 】

  • 上記の投資額には「建屋・建屋の改修費用」「内部の栽培設備・関連機器」「電気・水道などのインフラ工事」など全ての費用が含まれています
  • 黒字化を達成している最低投資額です
  • リーフレタスの場合、10億円以上の大規模施設も増加しています
  • 生鮮野菜を生産・販売する事業モデルを想定しています
  • 障がい者雇用型」「教育向けの小型キット」「レストランなどの店舗併設型」などは、例外として小規模モデル(少ない投資額)でもビジネスとして成立しています

リーフレタス換算、1日の株数・生産量で比較

本ページでは「生産面積」ではなく、「リーフレタス換算」にて、1日の株数・生産量で比較しています。栽培する作物、建屋の高さなどの条件次第では、大きく生産量が異なるため、生産面積での比較が難しいためです

  • 建屋の高さが異なる=栽培棚の段数が異なる=生産量が異なる
  • 栽培品種が異なる=野菜を植える株間・高さが異なる=栽培棚の段数・生産量に大きく影響

例えば、同じ「床面積」でも、栽培棚が5段と10段では、理論的には生産量が2倍になります。

また、栽培品種がリーフレタスバジルの場合、植物を植える株間(隣同士の距離)が異なり、バジルは上に伸びるために、1段あたりに大きなスペースを確保する必要があります

よって「栽培施設の床面積」「建屋の高さ」が全く同じ施設でも、栽培品種が異なれば、生産量も大きく変化することから、今回は、リーフレタス以外の品種を栽培する場合でも、比較しやすいように「リーフレタス換算」として再計算・表記しています

なぜ、大きな資本・投資額が必要なのか?

植物工場では、運営作業の多くを自動化設備・システムが行います。例えば、養液の場合、減少すれば水や肥料を自動で投入し、最適な環境(酸性・アルカリ性 pH値、養液の濃度 EC値)から離れると、自動で液肥や酸性・アルカリ性を投入して、調整してくれます。

また、栽培室内には多数のセンサーが設置され、全ての栽培環境を一括で自動制御することもできます。(栽培室内の温度・湿度照明の点灯時間も同様です)

大規模施設になると、多くの栽培工程も自動化されます。例えば、播種(種付け作業)、苗の移動、栽培器具の洗浄なども機械が自動で行う施設もあります。

当然ながら、こうした自動化設備・システムには大きな投資が必要となります。

せっかく自動化設備を導入したのに、栽培面積が小さいと宝の持ち腐れ、といえるでしょう。つまり、自動化設備が持つ能力を最大限発揮させるためには、一定規模の面積が必要になるのです。

具体的にいうと、リーフレタスの場合、少なくとも1,000株/dayくらいの生産規模が無いと、自動化設備を導入した意味が無い、といえます。また、この生産規模を実現するためには、冒頭に記載した最低投資額として「1億円」前後が必要になります。

【 植物工場 = 資本集約型 】

  • 自動化設備・システムを導入。少ない作業員で大きな栽培施設を管理している
  • 自動化設備の能力を最大限・発揮させるためには、一定規模の面積が必要
  • リーフレタスの場合、少なくとも 1,000株/day の生産規模&必要投資額 1億円前後が必要
  • 市場規模は小さいが、高単価な作物を栽培する場合、リーフレタスに換算すると 300~500株/day くらいの小規模な栽培施設でも成立している事例がある。この場合の必要投資額は 2,000~3,000万円前後が平均的である

さらに、投資額が少ない事業モデルは?

植物工場には、ある程度の投資額が必要になることは間違いありませんが、さらに少ない投資額でも成立する事業モデルが存在します。

例:障がい者雇用型モデル

例:店舗併設型モデル

近年、国内外にて「店舗併設型モデル」が増えている。右上は【シカゴの空港内に設置された植物工場】の様子。生産された野菜は空港内にあるレストランなどで地産地消・野菜として使用されている

有名ホテル内に設置された植物工場の様子。少量しか必要のない野菜は、設置した植物工場で全て生産している【究極の地産地消型=店産店消型|店舗で生産して店舗内で消費する】

このように「障がい者雇用型」「レストランなどの店舗併設型」に加えて、「教育向けの小型キット」など、小規模モデル(少ない投資額)でもビジネスとして成立している事例はありますが、リーフレタス等の生産・販売する通常の植物工場とは異なる、独自ノウハウが各テーマごとに必要となる場合もあります。

店舗併設型でも、1日で設置できる簡易的な設備から、上記の有名ホテルのような大型施設、またはデザイン性を追求した場合などは、1,000万円を超える事例もあることから、植物工場に必要な最低投資額を明言することは非常に難しいというのが結論になります。