前提条件・背景について
人工光型の植物工場では、栽培品種の 90% 以上がリーフレタス類を生産しているため、本データにおける植物工場の国内野菜シェアでは、リーフレタス類の国内シェアとして計算しています。
なお、太陽光型の植物工場では、トマトやイチゴなど高付加価値が望める果菜類を生産する施設が多く、レタス類の生産量は少ないため、シェア計算に含まれておりません。
しかし、太陽光を利用した施設の中で、植物工場には分類できない簡易的なハウスによる水耕・土耕では、リーフレタス類を生産する施設も広く普及していますが、本データには入れておりません。ここでは、あくまで人工光型・植物工場におけるシェア(リーフレタス類)を計算しています。
写真:簡易的なハウスによる水耕栽培例。栽培ベッドも写真のような「雨どい型」もあれば、大きな栽培プールに、発砲スチロール製の栽培パネルを浮かべる「プール型」の2種類がある。日本では「プール型」の水耕栽培方式が多いが、海外では「雨どい型」の施設も広く普及している。
植物工場やさいシェア(国内:2019年)
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国内シェア(2019)
弊社の調査では、2019年時点における植物工場やさい(レタス類)の生産量シェアは「1.8%」。
レタス類は大きく分けて「結球(玉)レタス」と「非結球(リーフ)レタス」があります。
重量と価格の点から、国内では広大な農地を利用した露地栽培による結球・玉レタスの生産が圧倒的に多く、リーフレタスの生産を主とする植物工場では、レタス類全体に占めるシェアは小さいのが現状です。
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リーフレタス限定・国内シェア(2019)
しかし、結球(玉)レタスを除外し、非結球(リーフ)レタスのみを対象にした植物工場やさい(レタス)の生産量シェアは「12.4%」となります。
2019年時点でも、植物工場にて生産されたリーフレタスが広く普及していることが分かります。
結球レタスの生産量は2001年頃から、約55万トン前後(市場流通ベース)で一定ですが、植物工場を含む非結球・リーフレタスの生産量は、毎年、拡大しています。
結球(玉)レタス VS リーフレタスとの比較
価格と重量だけで見れば、露地にて栽培される玉レタスが圧倒的に有利です。しかし、多様な消費者ニーズ・料理が普及している現在では、用途別や品質を重視した商品には、リーフレタスを採用する事例も増えています。
非結球・リーフレタスにおける分かりやすい例として『シーザーサラダ』があります。シーザーサラダには「ロメインレタス(リーフレタスの一種)」が使用されており、大手外食チェーンやコンビニでも、結球(玉)レタスを使用することはありません。
また、近年の異常気象による結球(玉)レタスの価格高騰を考慮して、リスクヘッジのために一定量を採用する外食チェーンも増えています。
第3次ブームの2009年~2010年頃から約10年以上が経過し、植物工場の生産技術も飛躍的に進歩しています。小売分野だけでなく、大きな需要が見込まれる外食分野への採用も、今後は増えていくことが予想されます。
注) ロメインレタスは、人工光型・植物工場だけでなく、太陽光を利用した温室ハウスでも広く栽培されています。
写真:ロメインレタス採用例(左)/植物工場によるフリルレタス採用例(右)。大手コンビニによるシーザーサラダ商品でも、必ずロメインレタス(露地栽培も含む)を採用。また、一部の外食チェーンやコンビニでも、人工光型・植物工場にて栽培したフリルレタスを採用した商品を販売している。
結球レタス
玉レタス- 広大な農地を利用した露地栽培が主
- 1玉重量が重く、スーパーで販売されている商品は平均して「350~400g前後/1玉」
- 1玉の小売価格:100円~200円前後/年平均
- 可食部(消費者が食べている部分)は平均して「60~70%前後」
- 量や価格を重視した商品に最適。今後もレタス類の中では、大きなシェアを占めることが予想される
非結球レタス
リーフレタス- 植物工場や簡易的なハウス栽培が主
- 1株重量が軽く、スーパーで市販されている商品は平均して「70~100g前後/1パック」
- 1袋の小売価格:150円~200円前後/店舗による
- 可食部(消費者が食べている部分)は平均して「90~95%以上」
- サンドイッチやサラダなどの用途別・品質を重視した商品に最適
今後の植物工場やさいのシェア予測
レタス類全体でみると、露地による玉レタスの生産量が圧倒的なシェアを占めているため、植物工場レタスのシェアは小さいように思われるかもしれません。
しかし、2019年時点においても、リーフレタスに限定すると 10% 以上で人工光型の植物工場にて生産されたものが採用されている状況を考えると、一般消費者が知らない間に、食べているケースも多いかもしれません。
最近の商品・メニューには、特別に記載するメリットを感じないため「植物工場レタスを採用」といった表記が消えていることも多いです。それだけ、植物工場野菜が広く普及しつつある、といえるでしょう。
今後も、植物工場やさいのシェア拡大が見込まれますが、露地による玉レタスと全てが置き換わるような状況は、重量・価格の面からも不可能に近いでしょう。
しかし、レタス類全体にしめる植物工場の生産量シェアは、2030年頃には 10% 前後となり、リーフレタスに限定すると、その半分 50% くらいが植物工場による生産になることが予測されています。
[本ページにおける市場データ]
- 植物工場やさいの生産量は、全国約200カ所の人工光型・植物工場の生産量を全てリーフレタス換算に計算して算出。リーフレタス以外の作物を生産する約10%の施設も、弊社がリーフレタス換算に再計算している
- レタス類などのマクロデータについては、野菜生産出荷統計, 作物統計調査, 地域特産野菜生産状況調査(農水省)などを基に、一部は弊社が独自推計している
- 2010年の植物工場レタスの生産量は太陽光利用型も含む。植物工場の生産量DATA:「農商工連携研究会 植物工場WG報告書」より
- 本データの植物工場生産量は、フル生産稼働時の出荷量を元に計算しており、実際の商品流通量については、各施設の稼働率によって変動することに注意が必要です。