太陽光と人工光の2つに分類される植物工場、リーフレタスの生産量は現在(2021年)、どちらが多いのでしょうか?各栽培方式における生産量の推移を簡単に解説していきます。

回答 → 現在は「人工光型」が多くのリーフレタスを生産しております。

リーフレタス生産工場の最初は「人工光型」

リーフレタスだけを量産する植物工場は、1990年前後~植物工場の第2次ブームと呼ばれる時期に出現します。最初に普及したシステムは「人工光型」。この頃は「野菜工場」と呼ばれており、代表的な施設はキューピー社による野菜工場(左写真)となっており、こうした植物工場が全国10数カ所で稼働します。

稼働した工場は、その後も安定的にリーフレタスを生産し続けますが、施設数は拡大せず、生産量は一定を維持します。

2000年前後~太陽光型が主流へ

2000年前後からは、リーフレタスだけを量産する太陽光型・植物工場が出現します。

現在でも稼働している代表的な施設は、JFEライフや日本農園が運営する大型施設となります。例えば、日本農園の場合は「ボストンレタス(サラダ菜)」というリーフレタス系の商品を大規模に生産・販売しています。

この頃から、太陽光型によるリーフレタス生産が徐々に増え始めますが、太陽光を活用し、高単価かつ市場規模の大きな果菜類(トマト)を選択する施設が多く、太陽光型・植物工場によるリーフレタス生産は、予想よりは大きく伸びませんでした。

2011年頃に「人工光」が逆転

2009年~2010年にかけて植物工場は第3次ブームに突入します。キッカケは、政府(農水省・経産省)による植物工場向けの大きな補助金・予算確保にあります。こうした補助金を活用しながら、太陽光・人工光ともに植物工場が次々に建設されます。

その中で、人工光型の90%以上がリーフレタスを生産する一方で、太陽光型でリーフレタスを生産する施設は数%になります。

現在でも太陽光型の多くが「トマト、イチゴ」といった果菜類を選択しており、葉野菜では「ハーブ系」や「他の葉野菜」(例: サラダ用のほうれん草や水菜、春菊、みつば 等)をメインで栽培しながら、一部だけリーフレタスを生産する施設が多く見受けられます。

【 具体的なデータ 】

  • 太陽光型・植物工場データ(H30年)では、各品目の面積シェア(設置実面積)を算出すると「トマトが全体の約80%」「イチゴが全体の約6%」となっている

例えば、太陽光にてリーフレタスを主力商品として大規模生産・販売を行う事例として、エスジーグリーンハウス社(西部ガス・グループ)があります。同社では「うるおい野菜」ブランドにて、複数のリーフレタス系商品を販売しております。[上写真: 同社ホームページより]

リーフレタスの生産量と今後の予測

以下の表(*)のとおり、2011年頃から人工光型が逆転し、リーフレタスの生産量を急激に伸ばしています。今後も、こうした傾向が一段と強くなることが予想されます。

(*) 各年度の太陽光・人工光型 植物工場の施設リストより、主にリーフレタスを生産する施設を弊社にてピックアップし、合算した。

対象は、一社)施設園芸協会が発行する各年度の「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」内の施設情報一覧を採用した。

太陽光型は、限られた条件を持つ場合のみ成功する

広大な敷地を保有するインフラ関連企業や、コスト削減に大きな役割を果たすエネルギー関連企業など、限られた条件を持つ企業だけが、太陽光型にて成功する可能性が高くなります。

人工光型と比較すると、農業の技術ノウハウも、ある程度は求められます。

また、生産されたリーフレタスに特徴を持たせることが難しく、露地や簡易的な施設栽培(温室ハウス栽培)の商品との差別化を、どうやって行うのかも課題の一つとなります。

よって、今後も条件にマッチした一部の企業・生産者のみが、太陽光型によるリーフレタスの生産を行っていくことが予想されます。一方、果菜類(トマト・イチゴなど)については、今後も太陽型がメインの栽培方法になります。

人工光型は、幅広い業種が保有するノウハウを活用できる場面が多い

農業に知識・経験が無く、異業種からの参入を果たす企業は「人工光型」の方が有利になる可能性が高いです。製造業・建設業・ITなど幅広い業種が保有する経営資源・ノウハウを、人工光型の方が、活用できる場面が多いからです。

上記の表[今後の予測]のとおり、リーフレタスという品目に限定すれば、人工光型・植物工場による生産が今後も増えていくことが予想されます。